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骨粗鬆症
骨粗鬆症について
骨は私たちの体を支えたり、脳や内臓を守ったりする大切な役割を持っています。普段は骨が丈夫なため、あまり意識しませんが、骨が弱くなると痛みを感じやすくなったり、簡単に骨折してしまいます。一度骨折すると、とても痛く、治るまでに時間がかかります。
特に高齢の方の場合、骨折して1~2か月たつと歩けなくなるほど筋力が落ちてしまい、介護が必要になることもあります。そうなって初めて、自分の足で歩けること、自由に動けること、身の回りのことが自分でできることの大切さを実感します。
元気で自立した毎日を送るためには、骨を丈夫に保ち、骨折を防ぐことがとても重要です。
日本の女性が介護が必要になる原因の上位には、以下のようなものがあります(厚生労働省 国民生活基礎調査より、2022年時点のデータ)。
- 認知症(20.8%)
- 骨折・転倒によるケガや関節疾患など運動器の障害(16.9%)
- 高齢による衰弱(老衰)(16.4%)
- 脳卒中(脳梗塞や脳出血)(14.1%)
- 心臓病や肺疾患などの内科的疾患(4.3%)
このデータからも、骨折・転倒などによる運動器障害が女性の介護状態を引き起こす重要な原因の一つであることが分かります。
※ 引用文献:厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』(2022)
当院では次のような検査、治療、指導を行っております
- 検査
- 食事、運動、指導
- 薬物治療
- 医科歯科連携
1.検査
① 骨密度測定
MD法(手のレントゲンで測定します) ※今年度中にDEXA法による骨密度測定装置導入予定(腰椎、大腿骨で測定)
以下に該当する女性は骨密度測定を推奨されております
- 65歳以上のすべての女性
- 閉経後(特に50歳以上)の女性で以下のリスクを有する方:
- 低体重(BMI <18.5)
- 喫煙・過度の飲酒
- 運動不足
- 骨折の既往歴(家族歴含む)
- ステロイド薬の長期使用(5mg/日を3カ月以上)
骨粗鬆症の診断基準
(DXA法による若年成人平均値(YAM)との比較)
- 正常:YAMの80%以上
- 骨量減少:YAMの70~80%未満
- 骨粗鬆症:YAMの70%未満

② 胸椎、腰椎レントゲン検査
骨粗鬆症患者の胸椎、腰椎X線 画像では、主に以下のような特徴が確認されます。
① 椎体圧迫骨折(Vertebral Compression Fracture; VCF)
- 椎体の上下方向の高さが低下し、特に胸腰椎移行部(Th11~L2)に好発します。
- 正面像では椎体の椎間板面の高さ低下がみられ、側面像では前方あるいは中間部が楔状(wedge shape)あるいは魚椎変形(biconcave)を呈します。
**圧迫骨折の形態分類:**
- 楔状変形(Wedge):前方部分が潰れて後方部分が保たれる(最多)。
- 魚椎変形(Biconcave):椎体の上下両端が中央に向かって凹む変形。
- 扁平変形(Crush):前後ともに椎体高が著明に減少する重度の圧壊。
② 骨梁の減少と骨透亮像(Increased Radiolucency)
- 骨粗鬆症患者では骨密度の低下に伴い、椎体内の海綿骨の骨梁が減少し、椎体がX線透過性亢進(radiolucent)となります。
- 椎体内の骨梁の描出が粗になり、骨皮質が薄く明瞭性が低下します。
③ Codfish vertebra sign
- 骨粗鬆症の進行に伴い、椎間板の内圧が椎体に作用することで椎体上下縁が凹状に変形します(biconcave deformity)。
- 側面像で椎体がタラの魚体のように上下が凹んで見えることから、この名称がついています。
④ Schmorl結節(Schmorl's nodes)
- 椎間板の髄核が椎体終板を貫通し、椎体内に入り込んだ状態。
- 骨粗鬆症自体に特異的な所見ではありませんが、骨が脆弱化することによって発生しやすくなります。
これらの所見は、骨折リスク評価や治療開始の判断材料として重要です。

写真 80代女性 第3腰椎圧迫骨折(biconcave deformity) レントゲンとMRI
③ 血液検査
骨代謝マーカー、ビタミンD、ビタミンK血中濃度、血中カルシウム値ほか(当院で主に測定する血液検査項目)
- Ca(カルシウム)
- 役割
骨の主成分で、筋肉・神経の働きにも重要。 - 参考正常値
8.6~10.2 mg/dL(総カルシウム) - 異常値の意味
- 高値:副甲状腺ホルモン異常などで骨からCaが出すぎ場合
- 低値:栄養不足、ビタミンD不足、腎機能異常などが関与
- 役割
- P(リン)
- 役割
カルシウムとともに骨や歯を作る。腎臓の働きが調整に大きく関わる。 - 参考正常値
2.5~4.5 mg/dL - 異常値の意味
- 高値:腎不全などでリンを排泄できない
- 低値:食事不足やビタミンD不足で骨の材料が不足
- 役割
- Mg(マグネシウム)
- 役割
骨形成やビタミンDの活性化に必要。 - 参考正常値
1.7~2.6 mg/dL - 異常値の意味
- 高値:腎機能低下でMgが体外に排出されない
- 低値:栄養不足や利尿薬の影響で不足
- 役割
- Alb(アルブミン)
- 役割
血液中のたんぱく質で、栄養状態を示す。Caの測定に影響することも。 - 参考正常値
3.8~5.0 g/dL - 異常値の意味
- 低値:栄養不良や肝機能低下など
- 役割
- ALP(アルカリフォスファターゼ)
- 役割
骨芽細胞(骨を作る細胞)の活動や肝臓の状態を示す。 - 参考正常値
38~113 U/L - 異常値の意味
- 高値:骨形成が活発(骨折治癒期など)/肝機能異常
- 役割
- 腎機能(eGFRなど)
- 役割
カルシウム・リン・ビタミンDの調整に重要。 - 参考正常値
eGFR 60 mL/min/1.73m² 以上(成人の目安) - 異常値の意味
- 低値:腎臓の働きが弱く、骨代謝にも影響が出る可能性
- 役割
- TRACP5b(骨吸収マーカー)
- 役割
骨を壊す細胞(破骨細胞)の活動を見る指標。 - 参考正常値(一例)
- 男性:約 120~420 mU/dL
- 女性:約 150~600 mU/dL
(測定法や年齢で異なる) - 異常値の意味
- 高値:骨が過度に壊されている状態(骨折リスク上昇など)
- 役割
- PINP(骨形成マーカー)
- 役割
骨芽細胞が新しい骨を作るときに産生される物質。 - 参考正常値(一例)
- 約 20~60 μg/L
(検査機関により異なる) - 異常値の意味
- 高値:骨形成が活発
- 低値:骨の形成力が低下している可能性
- 役割
- UCOC(アンダーカルボキシル化オステオカルシン)
- 役割
ビタミンK不足や骨質の状態を知る目安。 - 参考正常値
- 4.5 ng/mL 以下など
(施設により異なる) - 異常値の意味
- 高値:ビタミンK不足で骨質が弱い可能性
- 役割
- PTH(副甲状腺ホルモン)
- 役割
血中カルシウム量を一定に保つ。過剰だと骨からCaが溶けやすい。 - 参考正常値
10~65 pg/mL(施設により差あり) - 異常値の意味
- 高値:副甲状腺の過剰な働き(骨がもろくなることも)
- 低値:副甲状腺機能が低く、Ca調整が不十分
- 役割
- 血中ビタミンD濃度(25OHVD)
- 役割
カルシウムやリンの吸収を助け、骨を丈夫に保つために重要。 - 参考正常値
20~30 ng/mL以上が推奨(日本骨粗鬆症学会:30 ng/mL以上を推奨、施設により差あり) - 異常値の意味
- 高値:過剰なサプリメント摂取、稀に中毒症状(高カルシウム血症)の可能性
- 低値:ビタミンD不足によるカルシウム吸収低下、骨密度低下、骨折リスク増加
- 役割
- ホモシステイン
- 役割
ホモシステイン(Hcy)はアミノ酸代謝の中間産物であり、血中濃度が高値の場合、骨代謝に悪影響を及ぼし、骨質劣化および骨折リスク増加と関連することが報告されている。 - 参考正常値
血中ホモシステイン濃度は、一般的に15 µmol/L未満が望ましいとされている(日本骨粗鬆症学会推奨)。
※施設や研究により若干基準が異なるが、多くの研究で高値の基準は15 µmol/L以上としています。 - 異常値の意味
- 高値(15 µmol/L以上):
骨代謝異常を生じ、骨質の劣化を招き、骨折リスクの増加と有意に関連する。また、心血管疾患や認知症リスクの増加とも関連が示唆されている。葉酸やビタミンB群の欠乏、慢性腎疾患、高齢、生活習慣(喫煙、アルコール摂取過多)などが原因となりうる。 - 低値(15 µmol/L未満):
一般的には問題視されない。
- 役割
これらの検査は「骨を作る力・壊す力」や「栄養・ホルモン・腎機能」を総合的に見るために重要です。
異常がある場合は、食事・運動・薬物療法などで改善を図ることができます。
④ 骨折リスク評価(FRAX)
骨折リスク評価には、WHOが開発したFRAX(Fracture Risk Assessment Tool)を用いることが推奨されています。
- FRAXでは以下を予測:
- 今後10年間の主要骨折リスク(大腿骨近位部を含む主要骨折)
- 10年間の大腿骨頸部骨折リスク
以上の検査結果と性別、年齢、体格、生活習慣を考慮し治療法を決定します
2. 食事、運動指導
骨粗鬆症では、骨を作る材料や骨を支える栄養素をしっかり摂ることが大切です。以下のポイントを日々の食生活で意識してみましょう。
- カルシウム
- 働き:骨の主要な成分。体内で不足すると、骨からカルシウムが抜けて骨が弱くなります。
- 摂り方:1日700~800mgを目安に。
- 例)牛乳200mlで約220mg、ヨーグルト100gで約120mg、チーズ20gで約120mg、小魚1尾で約70mg
- サプリメントではなく、なるべく食事からとりましょう。
- ビタミンD
- 働き:カルシウムの吸収を助けます。
- 摂り方:1日10~20μgを目安に。
- 例)焼き鮭100gで約16μg、さば塩焼き100gで約7μg、卵1個で約1μg。
- 不足している場合は、サプリメントでの摂取もお勧めです。
- 日光浴:毎日15~30分ほど日光を浴びると、体内でビタミンDが作られます。
- ビタミンK
- 働き:骨を丈夫にするたんぱく質を活性化し、カルシウムを骨に取り込みやすくします。
- 摂り方:1日150~200μgを目安に。
- 例)納豆1パックで300~400μg、ゆでほうれん草100gで約300μg、ゆでブロッコリー100gで約220μg
- たんぱく質
- 働き:骨の土台となるコラーゲンなどを作ります。
- 摂り方:体重1kgあたり1.0~1.2g/日が目安。
- 例)鶏むね肉100gで約25g、豆腐1丁(300g)で約20g、卵1個で約6g
- リン(摂りすぎ注意)
- 働きと注意点:リンも骨の材料ですが、加工食品や炭酸飲料などで過剰に摂るとカルシウムの吸収を妨げる場合があります。
- 対策:過度にリンを多く含む食品(インスタント食品、ファストフード、清涼飲料水など)を控えめにしましょう。
- まとめ
- カルシウムやビタミンD、ビタミンK、たんぱく質などをバランスよく摂り、骨を強くしましょう。
- 加工食品や炭酸飲料に含まれる過剰な糖質、過剰なリン摂取は控えめに。
毎日の食事を少し意識するだけで、骨の健康はぐっと維持しやすくなります。
骨密度が低い方向け:おすすめの運動
- 有酸素運動(ウォーキングなど)
- 週3~5回、1回20~30分を目安
- 自分の体重を支える動きで骨に負荷をかける
- 筋力トレーニング(軽~中負荷)
- 週2~3回、チューブや軽いマシン負荷
- 骨を引っ張る力が大きいほど、骨が強くなる
- バランストレーニング(転倒予防)
- 片足立ちや太極拳、ヨガなど
- 姿勢を安定させ、転倒リスクを減らす
注意点
- 痛みがあれば無理をせず休む
- 水分をこまめにとり、疲れ過ぎないように
- 医師の指示や検査結果にあわせて運動量を調節してください
- 1日5000歩 日中楽しんで歩きましょう
- 継続してできる運動を

3.薬物治療
当院で処方されることが多い薬剤
- ボナロン® (Bonalon)
- 一般名
- アレンドロネートナトリウム水和物 (Alendronate Sodium Hydrate)
- 作用機序
- ビスホスホネート系薬剤
- 骨に結合し、破骨細胞内の酵素(ファルネシルピロリン酸合成酵素)を阻害することで骨吸収を抑制
- 椎体骨折、非椎体骨折ともにリスク低減効果を有する
- 投与量・用法
- 経口 週1回 35mgまたは70mg 製剤
- 服用時は起床後コップ1杯以上の水(約180mL)で服用し、服用後30分間は横にならない
- 腎機能による調整
- eGFR <35 mL/min 程度で原則使用は推奨されない(添付文書上「慎重投与または禁忌」)
- 腎機能軽度~中等度低下(eGFR 30~60 mL/min)では明確な減量規定はないが、十分注意して使用
- エビデンスレベル
- レベル1
- 大規模RCTにより有効性が証明
- 代表的副作用・注意点
- 消化管障害(食道炎、胃部不快感など)
- 長期服用で非定型大腿骨骨折や顎骨壊死(ONJ)のリスクに留意
- 一般名
- ビビアント® (Viviant)
- 一般名
- バゼドキシフェン (Bazedoxifene)
- 作用機序
- 選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
- 骨に対してはエストロゲン様作用(骨吸収抑制)
- 乳腺・子宮内膜には拮抗作用を示し、エストロゲン依存性腫瘍リスクを低減
- 投与量・用法
- 経口 1日1回 20mg
- 食事の影響は少なく、いつでも服用可能
- 腎機能による調整
- 特別な減量規定はなし
- ただし重度腎不全患者に対するデータは十分でなく、慎重投与が望ましい
- エビデンスレベル
- レベル 1~2
- 国内外RCTにおいて椎体骨折抑制効果が確認されている
- 非椎体骨折予防効果は限定的との報告もある
- 代表的副作用・注意点
- 血栓塞栓症リスクごくわずかな上昇
- ホットフラッシュや筋けいれんなどの可能性
- 一般名
- アルファロール® (Alfarol)
- 一般名
- アルファカルシドール (Alfacalcidol)
- 作用機序
- 活性型ビタミンD製剤(プロドラッグ)
- 体内で1α水酸化を経て活性化され、腸管からのカルシウム吸収を促進
- 骨吸収抑制・骨形成促進のバランス改善
- 投与量・用法
- 経口 1日1回 0.5~1.0 μg程度が一般的
- 患者の血清Ca値や腎機能などを考慮して調整
- 腎機能による調整
- 1α水酸化は肝で行われるが、重度腎障害ではCa/Pバランスに注意
- 血中CaやPを定期的に測定し、過剰投与による高Ca血症に留意
- エビデンスレベル
- レベル 2程度
- 国内での使用実績は豊富で、骨折抑制効果を示した研究もあるが、ビスホスホネートなどと比較すると大規模RCTはやや少ない
- 代表的副作用・注意点
- 高カルシウム血症、腎結石、消化器症状など
- 透析患者などでの使用時は特に血清Caモニタリングが必須
- 一般名
- エディロール® (Edirol)
- 一般名
- エルデカルシトール (Eldecalcitol)
- 作用機序
- 活性型ビタミンD3アナログ
- アルファカルシドールよりも腸管Ca吸収・骨代謝調整作用が強化されているとされる
- 骨折予防効果(特に椎体骨折)のエビデンスがある
- 投与量・用法
- 経口 1日1回 0.75μgまたは0.5μg
- 患者状態により増減
- 腎機能による調整
- 重度腎機能障害時には高Ca血症リスクが上がるため、慎重投与
- 定期的な血清Ca、P、腎機能のチェックを推奨
- エビデンスレベル
- レベル 1~2
- 国内RCTで椎体骨折抑制効果が示されている
- 代表的副作用・注意点
- 高カルシウム血症、腎機能低下時の電解質異常
- 他のビタミンD製剤と同様、過剰投与に注意
- 一般名
- グラケー® (Glakay)
- 一般名
- メナテトレノン (Menatetrenone, ビタミンK2)
- 作用機序
- ビタミンK2製剤
- オステオカルシンのカルボキシル化促進 → 骨形成のサポート
- 骨折予防効果は報告されているが、ビスホスホネートやデノスマブほどの強いエビデンスはない
- 投与量・用法
- 経口 1日45mg(15mg錠を1日3回など)
- 食事の影響は少ないが、適宜分割投与
- 腎機能による調整
- 特に減量規定は明確でない
- 重度腎機能障害での大規模データは少ないが、比較的安全に使用できるとされる
- エビデンスレベル
- レベル 2~3
- 国内の一部RCT・前向き研究では椎体骨折抑制効果あり
- 他剤と比較した大規模試験は少ない
- 代表的副作用・注意点
- 大きな副作用は少ないが、ワルファリンとの併用注意(ビタミンK拮抗作用を減弱させる)
- 一般的には補助的な位置づけ
- 一般名
- プラリア® (Pralia)
- 一般名
- デノスマブ (Denosumab)
- 作用機序
- 抗RANKLモノクローナル抗体
- 破骨細胞の分化・活性化を阻害 → 骨吸収を強力に抑制
- 椎体・非椎体・股関節骨折など幅広い骨折リスクを低減
- 投与量・用法
- 皮下注 60mg を6カ月に1回
- 投与を中断すると骨吸収がリバウンド増加するため、継続投与または他剤への切り替えが重要
- 腎機能による調整
- 腎機能低下時にも使用可能(eGFR <30でも適応可)
- ただし重度腎機能低下患者は低Ca血症のリスク増大 → 十分なCa・Vit D補充と血清Caモニタリングを推奨
- エビデンスレベル レベル 分類 1 2 3 4 5 6 システマティック・レビュー/メタ解析 1つ以上のランダム化比較試験(RCT) 非ランダム化比較試験 分析疫学的研究(コホート研究や症例対照研究) 記述研究(症例報告やケース・シリーズ) 患者データに基づかない、専門委員会や専門家個人の意見エビデンスレベル
- レベル 1
- 多数のRCTで有効性が示されている
- 代表的副作用・注意点
- 低カルシウム血症、顎骨壊死(ONJ)など
- 投与間隔遅延により骨折リスク増大が指摘されており、遵守が重要
- 一般名
- テリボン® (Teribone)の概要
- 一般名
- テリパラチド(Teriparatide)
- 作用機序
- 副甲状腺ホルモン(PTH)の活性部分(1-34アミノ酸)。
- 骨芽細胞を活性化し、骨形成を強力に促進。
- 椎体・非椎体の骨折リスクを低減。
- 投与量・用法
- 56.5μgを週1回、皮下注射。
- 最長投与期間は24か月(2年間)。
- 投与終了後は他剤(抗吸収薬)への切り替えが必要。
- 腎機能による調整
- 中等度の腎機能低下(eGFR ≥30)までは安全に投与可能。
- 重度(eGFR <30)の場合は慎重投与が必要(高Ca血症リスクあり)。
- エビデンスレベル
- レベル 1(複数のRCTで骨折抑制効果を証明済)
- 主な副作用・注意点
- 高カルシウム血症、悪心、めまい、筋肉痛、関節痛。
- 骨肉腫リスクを考慮し、投与は生涯で最長2年に限定。
- 投与後の継続治療(抗吸収薬)が推奨される。
- 一般名
- ビタミンD・Ca補充
- ビスホスホネート系薬剤やデノスマブなど、骨吸収抑制薬を使用する際はビタミンDとカルシウムの適切な補充が推奨される。
- 低アルブミン血症や慢性腎不全などがある場合は、血清イオン化CaやP、Mgも併せてモニタリングする。
- 腎機能モニタリング
- 特にビスホスホネート(ボナロン等)は、重度腎障害時には投与制限または慎重投与。
- デノスマブ(プラリア)は腎機能に左右されにくいが、重度腎不全では低Ca血症を起こしやすいため要注意。
- 長期使用の安全性
- ビスホスホネート:5年~10年を目安に休薬(BPホリデー)を検討する場合あり。
- デノスマブ:中止時の骨折リスク増大を避けるため、他剤への切り替え計画が必要。
- SERM・ビタミンK2・活性型ビタミンDは比較的長期的に使用可能だが、定期的な効果判定・副作用チェックは重要。
- エビデンスレベル
- レベル1(最も質が高い):複数のランダム化比較試験のシステマティックレビューまたはメタアナリシス,および質の高い単独のランダム化比較試験
- レベル2:適切にデザインされたコホート研究
- レベル3:系統的にレビューされた症例対照研究
- レベル4:症例集積研究,ならびに質の低いコホート研究および症例対照研究
- レベル5:批判的評価に基づかず,生理学,基礎研究,または基礎原理からの理屈に基づいた専門家の意見
- 当院ではテリボン等の骨形成促進薬の使用は、椎体骨折など脆弱性骨折を有する重症骨粗鬆症の患者さんのみに使用させていただいております。
補足・注意点
患者個々の骨折リスク・腎機能・既往歴・合併症・生活背景を総合的に考慮し、最適な薬剤選択とモニタリングを行うことが重要です。
4.医科歯科連携
骨粗鬆症治療では、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)のリスク管理を目的とし、医師(整形外科)と歯科医師との密な連携が必要です。
【連携が必要な薬剤】
- ビスホスホネート製剤(BP製剤)
- 抗RANKL抗体(デノスマブ:プラリア®)
- 骨形成促進薬(ロモソズマブ:イベニティ®)
【連携の具体的な流れ】
- 骨粗鬆症治療開始前(医師→歯科医師)
- 当院からかかりつけの歯科医師へ診療情報提供書をお出しします。
- 歯科受診し、口腔内の感染病巣(歯周病・う蝕など)を治療。
- 抜歯・口腔外科処置が必要な場合、原則として骨粗鬆症薬開始前に歯科治療を完了。
- 治療開始後(歯科医師→医師)
- 歯科治療が必要となった場合は、薬剤の休薬または治療継続について相談。
- 抜歯等の侵襲的処置が必要な場合、リスク評価を行い連携して対応を決定。
- 日本骨粗鬆症学会・日本口腔外科学会編『骨吸収抑制薬関連顎骨壊死ポジションペーパー2023』
医科歯科連携の徹底により、薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)リスクを最小化し、安全な骨粗鬆症治療が可能となります。
当院は小さいクリニックです。そのため1日に多くの患者さんを見ることができません。
一人一人を丁寧に診察させていただくため予約制となります。
<診療時間>
(午前)9:00〜13:00 (午後)14:30〜18:00
※通院中の患者様の急な症状の変化等の場合には予約外にても診療いたします。電話にてご連絡ください。
〒330-0063
埼玉県さいたま市浦和区高砂2-2-20Kビル3F
整形外科、リハビリテーション科、各種保険取り扱い
TEL:048-814-0260
FAX:048-822-0610